10月15日(金) 三日目
朝は4℃。
二日酔いがない!なんと不思議なことだろうか?
かなり寒い中この日は、故ラピエール氏同様
自然派の生産者から尊敬をされる生産者、ピエール・オベルノワ氏。
彼の愛弟子・義理の息子とも言えるウイヨン氏のいる
ジュラ地方へ車を走らせる。
気さくなウイヨン氏は熱心に説明をしてくれ、
毎年7月2日に取るぶどうの花・実のサンプルを見せてくれた。
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7月2日 毎年取る葡萄のサンプル |
最近の温暖化によって同じ時期でもブドウがだんだん早く成長している。
つまり、昔は100日の成熟期間があったのに、今は90日前後。
ブドウを本当の意味で熟させるのが、難しくなってきている。
糖分は幾分簡単に得られるようにはなっているが、
このままでは、深みの、ミネラル感のないワインしか出来なくなると懸念を
抱いていた。
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左から 02 03 04 暑かった03は早くも・・・ |
・Chardonnay'08
少し酸化的ニュアンスが彼らのシャルドネにしては珍しい・・・
ただ非常にミネラリーで癒される
・Chardonnay'08 Elevage Longue 2eme Tirage
1本目と同じパーセル、同じシャルドネの”古木”と良いぶどうから。
酸造もほぼ同じなのによりミネラリーで固い。
古木の仕事は素晴らしい、2年半もの間シュールリーで熟成。
・Ploussard'10 樽より試飲
2010年はプールサールとっては難しい年。樽から
2010年のワインを試飲したが、ほぼロゼの色合い
残糖はまだ少しあり、軽やかなヴィンテージになるとの事。
逆に白は大変よく出来て楽しみだそうだ。
・Ploussard '09
素晴らしい果実味・土壌のミネラル・優しいタンニンと旨味。
全てがナチュラル。ビン詰めはしてあるが、リリースはまだとのこと。
早くリリースして欲しい、プールサールは酸化しやすい品種である
と教えてくれた。
・Chardonnay Savagnin '07 CH70% Sa30%
2008年9月に瓶詰め。瓶詰め後オリが多かったので
手作業でビンからビンへオリ引きした。(どれだけの時間がかかったのだろう・・・)
ヴァンダンジュから全て混ぜて醸造。
ミネラリーで酸の伸びやかなワイン。
・Vieux Savagnin Ouille '99
ほとんどヴァンジョーヌ。複雑な香りは信じられない程。
クミン・メープルシロップ・・・。香りはいくらでも出てくる。
完璧に一体となったアルコールと水。口当たりが水の様。
・Vin de Liqueur '07(2001年はプールサーのものを造った)
マクヴァン・ド・ジュラのようなもの。
まだ若さを残しながら複雑な香り、あと10年後が楽しみ。
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レアモノ ヴァン ド リクール |
・Vin de Liqueur '98(シャルドネ 100%)
この頃までは(昔のやり方で)ジュースを煮詰めて、濃縮し
ヴァンドリクールを造っていたそう。これ程柔らかく複雑な
ヴァンドリクールは飲んだ事がない。もちろん香りも多彩。
信じられないほどの余韻!
◎ウイヨンさんとオベルノワさんが造るワインは本当にナチュラル。
そして、全てを包み込む優しさを持ったワイン。
オベルノワさんの人柄、それを受け継いだウイヨンさんの人柄が、
ワインに表れていると思った。ウイヨンさんに変わって、
ワイン変わったという人もいるが、彼らの意識が全く同じ方向性である事を
再確認できた。
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ウイヨン氏 オヴェルノワ氏 |
最後にオヴェルノワさんが挨拶に来てくれて、”神”とも
言われるお方にお会いできてよかった。
彼ら二人の優しさ・人々を包み込むオーラにエネルギーをもらい、
ジュラを後にする。
《ひとつ興味深い話》
試飲中ウイヨンさんのお母様が現れて、
『薬を頂戴』と一言。
ウイヨンさんがお母様に注いだのは、プールサール’09・・・!?
薬??????
きょとんとしている我々に、お母様は
『これがあたしの薬』
お母様。実は、糖尿病で通風。
『ここの赤ワインだけは、本当に薬なのよ。』
ウソかホントか血糖値が下がるし、通風の痛さは出ないらしい。
(本気で言っていたし、ここのワインなら本当に信じれるが・・・)
そして、ちゃっかり口の空いた赤ワインを、持ち去っていった。
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ジュラはいつも霧が立ち込めて・・・ |
午後は、Jean-Claube Lapaluさん宅へ
途中、Arbois近くのレストランでチーズフォンデュを
食べる(一人前 10.50ユーロ)
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本場のフォンデュ |
この地方ならでは。贅沢にもコンテを作っていて濃厚な味わい。
日本でコンテを使ってフォンデュを出したら、3倍の値段だろう。
1時間ほど車を走らせてモルゴン村へ戻る。
伊藤さんが、マルセル・ラピエールさんに最後のお別れと彼のお墓へ。
とんでもない量のお花。墓地で一番質素な十字架だけのお墓・・・。
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通りすがりのモルゴン ”コート ド ピィ” |
Jean Claude Lapalu
伊藤さんいわく、ラパリュはいい!本当に最近良くなった!
とのこと。伊藤さんがそこまで言うのなら本当に楽しみだ!
・Beaujolais Nouveau'10 タンクより試飲
昨日おり引きしたばかりのものもあり、また落ち着いて
いない感じがあるが酸が美しい!12〜15日のマセラシオン。
10/25プレス 11/3出荷予定
とても満足した収穫が出来たらしく、ヌーボーはこのまま順調に行けば、
素晴らしいものになるに違いないとおっしゃっていた。
特に、伸びやかな酸、ひときわフレッシュなヴィンテージと感じた。
日本への到着が楽しみ。
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ラパリュさんのカーヴ |
・Beaujolais Village'10 タンクより試飲
果実味が素晴らしい。多少還元している。フレッシュな酸がある。
・Cote de Brouilly '10 樽より試飲
収量は35hl/ha。 V.V.はInoxタンクにて発酵中。
比重は現在990でまもなく発酵が終了。樽発酵のものもあり。
※2009年はぶどうは良かったものの、醸造は難しかったとの事。
2010年は逆に醸造において酸敗の心配もなく順調。
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ラパリュさんと彼の偉大なワイン |
《2009ティスティング》
・Brouilly V.V.'09 14.5%Alc
グルナッシュなど南を思わせる濃厚でスパイシーな香り。
14.5%のアルコールはそれ程感じない。
・Brouilly "La Croix des Rameaux" 13.5%alc
ピエスでの発酵熟成。バニラの様な香り、カベルネ・メルロー
を連想させる濃厚なワイン。
・"Cuvee des Fous"09 14%alc
今回の09年試飲で最もピュアでフルーティー。ミネラル感や骨格
もありうまい!! 110年のV.Vより。
・"Rang de Merle" '09 15% Alc
10年春まで発酵が続いた。少し樽のニュアンスも感じた。
果実味のボリューム、タンニンはキメ細やかだが、若く力強い。
・"Cuvee des Fous" '05 12.8%Alc
アニマリーで黒い果実を連想させる。鉄っぽいミネラル感。
タンニンはまだ若いが細かい。エレガントでバランスのいいワイン。
・Beaujolais Villages V.V '00
シラーやピノを熟成した感じ。ガメイの熟成ポテンシャルを感じる。
ややオレンジがかったエッジ。美しい熟成。貴重なティスティング。
◎Lapalu家において2010年はとてもいい年になりそうだ。
フレッシュで豊富な酸とエレガントで果実味あふれる、
バランスの取れた年になりそう。ヌーボーは順調で
他の遅れている醸造の蔵があるのに対して、とても順調な発酵。
11月3日には出荷、10年の平均収量は36〜37hl/ha
ラパリュさんはヌーボー や”Cuvee de Primtemps”と呼んでいる
キュベ名なしのワインは、Inox(ステンレス)が樹脂のタンクで熟成。
その上のキュベ名入りのワインは樽熟を行っている。(古樽)
以前のラパリュさんのワインよりアルコールや濃縮感は
増していながら、美しい酸やフレッシュ感のあるイメージ。
濃度が上がりながら全体像として、少しエレガントにシフトした印象をうけた。
又、アンフォラで発酵させるなど、面白いチェレンジもしているし、
120年前の重直式プレスを購入。(以前はVaslin)
より繊細さが増した。
因みに彼は、自然派の生産者がよく行う、セミカルボニック・
マセラシオンではなく、100%のマセラシオン・カルボニックを行う。
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興味深いアンフォラ |
伊藤さんがおっしゃるように、ラパリュさん素晴らしい!
今後絶対に素晴らしいワインとの出会いがあるはず!
とても、柔らかい人間性の明るいラパリュ氏。
ブルイィ、超急斜面の大変耕作の困難な、コート ド ブルイィ。
この村を代表する生産者であることは、間違いない!
ボージョレーの偉大なる可能性に打ちのめされた我々は、
車でLyonに向かい、夜はLyonの日本人シェフ石田克己さんの店
『En mets fait ce qu'il tu plait』での夕食。
父の様にマルセル・ラピエール氏を慕う彼。悲しみの中でも
葬儀の次の日にはきちんと営業しているプロフェッショナリズム。
この日は、克己さんに全ておまかせ。
Amuse
・Soupe de Pomme de Terre aux Truffe
冷製のジャガイモスープ。トリュフオイルの香りがふわりと・・・。
滑らかな口当たりで、最初の一皿からウマイ!
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絶品! |
1er
・Salade de Calmar et de Pulpe sauce Poivron Rouge
蛸とイカの温製サラダ仕立て。
克己さんならでは。フランスで魚介をこんなにおいしく調理する
シェフはいないと、伊藤さん。私もそう思う!
Poisson
・Daurade Poele aux Agrumes
真鯛のポワレを柑橘風味のムール・アサリのクリームソースで。
香ばしく焼いた皮目とふっくらしあがった白身。絶妙のバランス。
さすが克己さん!ここまで伊藤さんは『うーまい』としか言ってない。
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『うーまい』伊藤さん |
Viande
・Perdreau Roti Foie gras Poele、Sauce son Jus Avec Chou Braise
ヤマウズラのローストとフォアグラポワレ。
しっとりと仕上がったヤマウズラは香り高く。
伊藤さんまたも『うーまい』!
Vin
・Arceze'08 / Bera vittorio
Cortese Arneis Favorita のブレンド
食前酒的にマダムが選んでくれた、イタリアのビオワイン。フリッツァンテ。
・Savagnin Ouille '07 / Maison Overnoy
酸化的ニュアンスが少なく、ミネラリーなサヴァニャン。ウイヨンさんが
サヴァニャンがテロワールをよく表現するセパージュだと言っていたのがわかる。
・VdT V.V. '04 / Domaine de Peyra
ガメイ ドーヴェルニュの超ナチュラルワイン。 いつも思うが、
このワインは仏で飲飲んだほうが断然うまい!日本だと多少還元がある。
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ザ・ナチュラルワイン |
・Lin de Liqueur '98 /Maison Overnoy
最後にウイヨンさんがお土産にくれた偉大なワインを石田さんと共に。
・Marc '90/Julien Guyot
そのお返しに石田さんが、素晴らしいマールを空けてくれた。
このマール。42度あるのにアルコールを感じない!
二日目もどっぷりアルコール漬け。その後も、スタッフのだんなさんが
ビールを大量に空けて、飲み続ける。(これが効いた)
ただのビールではなく、苦味のあるもの、凝縮したもの、果実味のあるもの。
色々あって、テイスティングの訓練にはなった。
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美しきリヨンの町 |
リヨンのホテルに帰って、三日目もおしまい。なんと早い一日なのだろう!
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